中心がズレている(正中ズレ)
正中ズレとは
正中(せいちゅう)ズレとは、上の前歯のまん中の線(上顎正中)と下の前歯のまん中の線(下顎正中)が一致していない状態をいいます。また、顔の正中線(鼻柱〜上唇のくぼみ〜顎先)と前歯の正中がずれている場合も「正中ズレ」と呼ばれます。
軽度のズレは自然な範囲のことが多いですが、見た目や機能に影響する場合は治療が必要です。例えば写真で見たときに傾きや歪みが目立つ場合や、噛み合わせに違和感がある場合は治療の対象になります。
セルフチェックの目安
- 鏡(正面)の前で軽く噛んだとき、上と下の前歯の中心がずれているのがわかる
- 正面写真で、鼻〜上唇のくぼみ〜顎先の線と上の前歯の中心が一致しない
- 口角の高さや笑ったときの歯ぐきの見え方が左右で違う
正中ズレの原因
正中ズレが起こる主な原因は以下のとおりです。
- 歯の位置や歯列の不調和(歯性)
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片側だけに叢生(ガタガタ)がある、乳歯を早く失った、あるいは長く残った場合に、永久歯の生え方が乱れて正中がずれることがあります。さらに、生まれつき歯が足りない(先天欠如)や片側だけ歯が小さい場合、左右のバランスが崩れて中心がずれる原因となります。
- あごの非対称(骨格性)
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上あごと下あごの成長に差がある、あるいは左右の発育に不均衡があると、歯列全体が一方に寄ってしまい正中ズレが生じます。顎関節の発育差や顔の骨格が縦・横に回転することで、見た目にもあごの位置がずれて見えることがあります。
- 噛み合わせや習癖の影響
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片側だけで噛む癖や頬杖、舌の位置の癖は、歯列やあごに一方向の力をかけ続けます。その結果、下あごが噛むときに横へ逃げる「機能的偏位」が起こり、正中のズレにつながります。
- 歯周病や過去の治療の影響
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歯周病による歯の移動や、過去の抜歯・被せ物などで歯列全体のバランスが崩れ、中心線がずれる場合もあります。
正中ズレは複数の要因が重なって起こるケースがほとんどです。そのため、レントゲンや口腔内写真、3Dスキャンで歯の大きさ・顎の骨格・噛み合わせの接触関係を総合的に確認することが欠かせません。当院では、正中ズレの原因を調べるための精密検査・診断を無料で行っています。
正中ズレの治療方法
正中ズレの治療は、単に歯を動かすだけではなく、ズレの原因(歯性・機能的偏位・骨格性)に応じて中央を合わせ、噛み合わせの安定性を確保することが基本方針です。
ズレの程度が数mmなのか、骨格性の非対称を伴うのかによって選択肢は大きく変わります。ここでは主な治療方法や補助的処置、治療のリスク・注意点、期間の目安などを解説します。
主な治療方法
正中ズレの改善には、マウスピース矯正やワイヤー矯正が中心となります。歯並びが原因の軽度な正中ズレは比較的短期間で整いますが、骨格性の非対称を伴う正中ズレは外科的矯正が必要になることもあります。
マウスピース矯正(アライナー)
矯正方法
透明で目立ちにくく、段階的にマウスピースを交換しながら歯を動かす方法です。左右非対称の設計を組み込み、片側を優先的に動かすことで上下の正中線を一致させます。食事や歯磨きの際に取り外しができる点もメリットです。
向いているケース
- 歯並びが原因の軽度〜中等度の正中ズレ
併用される調整方法
- IPR:片側の歯をわずかに削合し、左右差を整える
- 片側遠心移動・歯列拡大:一方の歯列を広げたり後方に動かし、中心を合わせる
- 顎間ゴム:片側のゴムかけで下顎を左右に誘導し、正中を補正
- アタッチメント:前歯の回転やトルクを調整し、歯の動きを精密にコントロール/マウスピースのフィット感を高める
ワイヤー矯正(表側・舌側)
矯正方法
ブラケットとワイヤーを使い、歯を三次元的に動かす方法です。左右非対称の力を加えやすく、数mm以上のズレや片側のみ大きな移動が必要な場合にも対応できます。舌側矯正は見えにくい反面、清掃や発音への慣れが必要です。
向いているケース
- 歯並びが原因の軽〜重度の正中ズレ
- 片側の抜歯を伴うケース
- 骨格性要因が軽度で、歯の移動による補正が可能な正中ズレ
併用される調整方法
- 非抜歯矯正:歯列の拡大や部分的なアーチワイヤー調整でズレを修正する
- 抜歯矯正:片側の小臼歯や親知らずを抜歯し、スペースを利用して正中を計画的に移動する
外科的矯正
矯正方法
骨格の非対称が原因で正中ズレが大きい場合に行う治療です。矯正単独では限界があるため、手術で顎の骨を移動し、顔貌のバランスと咬合の安定を同時に改善します。
向いているケース
- 骨格的な左右非対称が強い場合
- 顎関節や成長差が原因でズレが大きい場合
- 咀嚼や審美面で機能的改善を求める成人
治療の流れ
術前矯正 → 顎矯正手術 → 術後矯正 → 保定
※手術を先に行ってから矯正治療を行うサージェリーファーストの方法が選択されることもあります。
補助的に用いられる装置・技術
正中ズレは「歯を均等に動かす」だけでは改善が不十分な場合があり、補助的な技術を組み合わせることでより精密な調整が可能になります。
機能的偏位への対応
噛むときに顎が横へ逃げる「機能的偏位」がある場合は、その原因となる早期接触や交叉咬合の改善が先決です。軽微な咬合調整やMFT(口腔筋機能療法)を取り入れ、舌や嚥下の癖を改善して再発を予防します。
歯の欠如・幅不調和への対応
歯の本数や幅の左右差が原因の場合は「幅の足し引き」で整えます。例としてダイレクトボンディングやベニアで小さい歯を補い、反対側はIPRで幅を調整するなど。先天欠如がある場合は、犬歯を前歯化するか将来的なインプラント・ブリッジに備えてスペースを管理します。
保定(リテーナー)とメンテナンス
正中ズレは再発しやすい傾向があり、矯正後はリテーナーでの安定化が欠かせません。以下のリテーナーを症例に応じて使い分け、舌や嚥下の癖(MFT)を並行して改善することで長期安定を図ります。
- 固定式(前歯舌側ワイヤー)
- 取り外し式
定期的なチェックで中心線の維持や噛み合わせの安定を確認します。
リスク・注意点
正中ズレの治療では以下の点に注意が必要です。
- 歯の移動に伴う痛みや違和感、装置の不快感
- 清掃不良時の虫歯・歯周病リスク
- 歯根吸収・歯肉退縮・ブラックトライアングルの可能性
- エラスティックの協力度や通院遵守が結果に直結
- 外科治療を伴う場合は、腫脹・出血・神経症状などの手術リスク
正中ズレの治療期間の目安
正中ズレの矯正は、ズレの程度や原因(歯性/骨格性)によって大きく異なります。以下はあくまで一般的な目安です。
- 軽度の歯性ズレ:6〜12か月
- 中等度(抜歯やTADsを併用するケース):12〜24か月
- 骨格性で外科的矯正を含む重度症例:18〜30か月
※個人差が大きいため、実際には精密検査を行ったうえで具体的な治療計画が立てられます。
当院の方針
- 精密検査で、正中ズレの要因を見える化し、シミュレーションで治療後のイメージを共有します。精密検査・診断は無料です。
- 歯並びが原因の軽度〜中等度の正中ズレは、基本的にマウスピース矯正での治療を提案します。
- 事前に治療のメリット・デメリット、期間、費用を丁寧にご説明し、納得いただいてから治療を行います。
